なにごともMIXされた時代。参加してくれた、日本に住みながらも人種も国籍もさまざまなこども達。とりわけハーフと呼ばれる子供たちはその象徴だと思いました。いまどきのこども達はたくさんのものに囲まれ、そうかと思えば、規則に縛られ、危険と隣り合わせの環境の中にいるのです。
大切なものはなに?と問いかけをしてはみたものの、8割ぐらいの子がゲーム機やソフトを持ってくるだろうと思っていました。外で遊べない。コミュニケーションも苦手。それならそれでいい、今の日本の現状なのだから。淡々と撮ろう。私はあえて何を持ってくるか事前に尋ねることをやめました。

そして撮影当日。

満面の笑みで自慢のペットをみせてくれたブライアン。風船ひとつで飛び回るりゅうか。ママのお腹にいる赤ちゃんを楽しみに赤ちゃんごっこをするリナ。そのリナを大事そうに見守る兄のディアン。結局一回しかできなかったけど一生懸命何度もやってくれたイライジャのヨーヨー。
何事にもシャイで、人前に立つのが苦手そうだったディビット。
撮影が終わって数日後、彼が人前で表現することを楽しいと感じるようになったと家族中で喜んでいるとの伝言をもらいました。

普段は米国に住み、夏休みで友達のところに遊びに来ていたリムルは、まっすぐな目をした才能ある日本人のダンス少年でした。彼ははじめて会った私たちにも物怖じすることも
なく流れる音楽に合わせて、思いつくままに表現してくれました。おとなの言葉をすべて自分のものに吸収する勢いのあるすばらしい目をしていました。

「私、なに持ってきたと思う?」そう聞いてきたのはマリサでした。誰よりも強いまなざしで、笑わない表情がとても魅力的なクールな彼女。めずらしくいたずらっ子そうな目で見せてくれたのは、ハートに切り抜いた赤い折り紙。「・・・心だよ。」ちょっと恥ずかしそうに、はにかんだ笑顔。ハートの折り紙を持ってカメラの前にたったマリサはとてもHappyで、すてきでした。

強烈な個性で現れた、二人の姉妹、キャサリンとアレクサンドラ。おとなに対する反感がむき出しの、そこまで気持ちを露わにできるエネルギーは凄まじいものでした。二人のママはとても強い女性で、誰よりも社会性に富んだ正義感のあるたくましい心をもった人に感じました。反対にパパはすべてを包んでくれそうな、すてきな笑顔の持ち主でした。あのエネルギーは何に対する思いなのか。時間をおくうちに、やっとカメラの前にたった二人。中でもキャサリンの変化は驚くものでした。彼女は無意識に自分というものの見せ方を分かっていました。彼女がこれからどこに向かっていくのかはわかりません。が、ものすごく何かの可能性を秘めているように感じました。
規制の枠に収まりきらない個性をもつ二人の姉妹。彼女たちにあう自己表現の場がはやく見つかってほしいと思いました。